助成対象詳細
2022年度

抗老眼サプリメント創製を見据えた抗老眼機能をもつ緑茶成分の解析

計画

老眼(老視)は一般的に40-50歳から発症し、65歳でほぼ100%の罹患率をもつ眼疾患であり、患者の生活の質(Quality of Life: QOL)や見え方の質(Quality of Vision: QOV) を大きく低下させる。根本的な治療法はなく、近距離作業の際は老眼鏡などを用いて見えにくさを補っている対症療法が一般的である。

老眼の相対的評価法やマーカーがなく、まだモデル動物も開発されていないため、病態の基礎研究がほとんどされていない。老眼は、水晶体硬化による近方距離の調節不全であるが、硬化の原因として、水の流動性不全が推察されている。水晶体の水流動性はTRPV1とTRVP4によって制御されていることが示唆されており、我々はTRPV1とTRPV4の発現様式をすでに報告し、またその活性系も技術習得している。

緑茶はエピガロカテキンガレート(EGCG )やビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化物質を豊富に含むことが知られている。水晶体は常に光酸化にさらされているため、抗酸化物質の摂取は白内障を予防することは古くから知られている。そのためEGCGを含めた緑茶成分が白内障や老眼を抑制する可能性が大きく推察される。さらにEGCGがTRPVチャネルを活性化することが複数の研究チームから報告されていることから、抗酸化以外のメカニズムで老眼を予防する可能性が推察される。

そこで本助成研究では、

  1. 各種濃度の緑茶を自由飲水による経口投与によるマウス水晶体の硬度測定や免疫染色によるTRPVチャネルなどの局在観察(in vivo)
  2. 水晶体上皮細胞株に緑茶で刺激した際のTRPVチャネル活性や下流分子の活性 (in vitro)

を検討することで、緑茶の抗老眼機能を見出し、抗老眼薬あるいはサプリメント創製の基盤を作ることを目的とした。

成果

本助成研究により以下のことが明らかとなった。

  1. 各種濃度の緑茶を自由飲水による経口投与によるマウス水晶体の硬度測定や免疫染色(in vivo)

本助成研究では、亜セレン酸ナトリウム誘導白内障モデルを用いた。亜セレン酸ナトリウムによって誘導された白内障の進行は、緑茶喫飲によって抑制されることが明らかとなった。また、水晶体内の抗酸化物質もまた、亜セレン酸ナトリウム投与によって有意に減少するが、その減少は緑茶の経口投与で抑制されることが明らかとなった。さらに、水晶体の弾性を測定した結果、亜セレン酸で水晶体が硬化し老眼様症状を誘導されたが、その老眼様症状は緑茶経口投与で抑制されたことから、緑茶が抗老眼作用を示すことが明らかとなった。

  1. 水晶体上皮細胞株に緑茶で刺激した際のTRPVチャネルやPiezoチャネルの活性検討(in vitro)

水晶体上皮細胞に5% 緑茶で刺激した際のTRPV1およびTRPV4の活性および下流分子のリン酸化を検討した。その結果、水晶体上皮細胞では緑茶成分がTRPV4を活性化し、その下流分子をリン酸化することが明らかとなった。さらにNa/K ATPase活性を検討した結果、Na/K ATPaseを活性化することから、水晶体からNa+排泄による水流動性改善に寄与することが強く推察された。その他、タンパク質架橋化酵素の発現・活性に対しても抑制的に働くことが明らかとなった。

本助成研究では、緑茶の活性成分まで同定はできなかったが、緑茶の抗老眼活性をもつ活性本体が同定できれば、老眼薬あるいは老眼サプリメントの創製が強く前進することが推察された。

プロジェクト情報

助成番号
G22-0007
金額
1,000,000円
期間
2022年8月 ~ 2023年7月
受賞者
中澤 洋介
所属先
慶應義塾大学薬学部 専任講師
キーワード
老眼,アンチエイジング,アイケアサプリメント